第5期集合写真 SS付

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 「おい、ソーモンのヒラガのところに行くぞ」

ある晴れた日、皇帝ハーキュリーズは仲間たちに対してそんなことを言い出した。
「え、何のために行くんですかー」
「新しい発明品が完成したらしい。『カメラ』というそうだ」
タンクレッドの問いに答えながらハーキュリーズはマントをひるがえして歩き始めた。
「キャメラー? 何デスカー、それは。亀なら知ってますけどNE~」
「亀ではないと思いますよ、フランクリンさん」
フランクリン、タンプクも後ろに従った。
「チッ、めんどくせえってんだよっ」
スターリングもぶちぶちと相変わらず文句を言いながら最後尾についてきた。
「えらく便利なものらしいからな。行ってみる価値はあるだろう」
今までにも帝国に代々伝わるアイテムがあった。
もしかしたら今回のヒラガの発明品もそんな貴重なものかもしれない。
好奇心を胸に抱き、ハーキュリーズたちはソーモンへと一路進んでいった。

「ほへはほうへいへいは(これは皇帝陛下)、よふほいあっはいはひは(よくぞいらっしゃいました)」
ヒラガの家に着くと、いつも通りのフガフガ声でヒラガは一行を迎え入れた。
「発明品が完成したと聞いたが。確か『カメラ』とか言ったか」
「はい、ほのほーりでふ(はい、その通りです)。
ほへは、まふへえのように(これは、まるで絵のように)
へいはのおふははをうふひほふほほはへひうおえふ(陛下のお姿を写しとることができるのです)」
「チッ、説明はいいから早く見せろっつんだよ」
ヒラガのフガフガ声に辟易したのか、スターリングが舌打ちしながら遮った。
「はいはい、ほえでふ(これです)」
そうしてヒラガが持ち出したのは小さな黒い箱のようなものだった。
前面に突き出た筒のようなものにはレンズがついている。
「へえー、これがカメラっていうんですかー。
何だか、すごいですねー!」
早速タンクレッドが目を輝かせながらカメラを四方八方から眺めた。
「まだ何もしてないダロー」
フランクリンの突っ込みも聞こえていないようだ。
「陛下、持ってみてもいいですk」
「ダメだ」
タンクレッドが最後まで言うまでもなくハーキュリーズは一蹴した。
「陛下~~」
「海風貝のことを忘れたとは言わせねえ。お前は持つな、タンクレッド」
「そんなー!」
それを言われては何も言い返すことができず、タンクレッドはショボンと肩を落とした。
「まあまあタンクレッドさん。元気を出してください」
「・・・うう」
タンプクに励まされ、タンクレッドはいよいよ小さくなった。
そこに割って入ったのはフランクリンとスターリングだ。
「じゃあ代わりにワタシが持ちますYO~」
「っざけんじゃねえ、オレが持つってんだよ、チッ」
「ワタシのほうがパワーあってストロングですYO~」
「オレのほうが器用じゃねーかよっ、チッ」
そんな二人の様子にハーキュリーズは溜め息を禁じえなかった。
まったく、こいつらはいつもいつも・・・。
「おほほばでふが(お言葉ですが)、
ほへはわはひがもっへおひはふ(これは私が持っておきます)。
へいははひはあひらへおははひふははい(陛下たちはあちらへお並びください)」
「ん、なぜだ?」
「みははんがうふるほうがほいへほう(皆さんが写るほうが良いでしょう)?」
「・・・なるほど」
そこでタンプクが頷いた。
「つまり、私たちが被写体となり、カメラの操作はヒラガ博士、貴方がなさるということですね」
「ふぁい」
「皆さん、ヒラガ博士は私たち5人ともを写してくださるそうですから、あちらに並びましょう」
タンプクが言うと、訝っていたハーキュリーズも、気落ちしていたタンクレッドも、
言い争いをしていたフランクリンとスターリングもしぶしぶ従った。
さすが、パーティーのブレインの言葉は威力があるようだ。
一行はタンプクに促されてオレンジ色のカーテンの前に並んだ。
「ああ、もうひょっひょひゅうほうによっへふだはい(もうちょっと中央に寄ってください)」
ヒラガが手を左右に動かして立ち位置の指示を出す。
結果、前列にハーキュリーズ、タンクレッド、タンプク、後列の台の上に
フランクリンとスターリングが立つことになった。
「へは、なにはぽーずをほっへふだはい(では、何かポーズをとってください)」
「ポーズ?・・・こうか?」
ハーキュリーズは右手を顎にやって不敵な笑みを浮かべた。
「こんな感じで、いいですかねー?」
タンクレッドもピースを作って笑顔になった。
「いささか、緊張しますなあ」
タンプクは腕を組んだ。
前列の用意は整った。
「へはいひまーふ(では行きまーす)」
ヒラガがカメラを覗き込みながら言った。
「チッ、おめ、こっち来んじゃねえよ」
「Oh、アナタこそもっとそっちに寄ってクダサーイ」
・・・後列の台がガタガタ言っている。
どうやらあまり幅のない台だったようで、ポーズをとっている三人の後ろで
スターリングとフランクリンが小競り合いをしているのだ。
「これ以上寄ったらワタシ、ドロップですYO~」
「おめーこそ、オレが写らねえじゃねっかよっ」
「ワタシが落ちてもいいと言うんデスカー!?」
「チッ、男のくせにうだうだ言ってんじゃねえよっ、
いいからどけっつんだよっ」
互いに肘で顔や脇腹を押し合いながら自己主張をし合っている。
だが、ヒラガは耳が遠かった。
「はい、ひーふ(はい、チーズ)」
パシャッ!!
眩しい光が5人を捉えた。

この時に出来上がった写真は5枚。
各自が一枚ずつ持つことになった。
「チッ、別にいらねーよ」
「いらないんなら、ワタシがもらってあげましょうか~?」
「やらねーよ!!!」
などとスターリングが矛盾したことを言っていたいたが、結局旅を終えるまで
皆それぞれに大切にしていたことは言うまでもない。
ハーキュリーズは宮殿の自室の机の中にひっそりと置いて。
タンクレッドは可愛らしい額に入れていつも持ち歩いては楽しそうに眺めて。
タンプクは愛用している術法の本の間に挟んで。
フランクリンは鎧の中の懐に忍ばせて。
スターリングは写真を小さく小さく折りたたみ、シーフの七つ道具を入れている
大切なポーチの中に放り込んで。

そうして彼らは歴代のパーティーの中でも稀に見る仲良しパーティーとして、語り継がれることとなった。
このとき発明されたカメラが、後の皇帝 の仲間であるイザベラに愛好されたのはまた別の話・・・

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