酔うと仲良し(ジェイコブとマゼランとロナルド)SS付

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マゼランとロナルドとジェイコブのSSです↓
 

酔うと仲良し

私の名はジェイコブ。
カンバーランドのホーリーオーダーとして陛下にお仕えしている。

モンスター退治からアバロンに戻ってきたある夜、ユリシーズとジェミニと別れてから唐突に陛下は仰った。

「おい、おめーら。飲みに行くぞ」

ああ、また始まった、陛下の気まぐれが。
どうしていつもそうなのですか。
ついさっきまでは『さっさと解散して寝る!』って言ってたじゃないですか。

「え~さっきと言ってることが変わってますYO~」
「うるせえロナルド。今飲みたくなったんだからいいだろうがよ」

何なんですかその論理は。

「・・・で、どちらに飲みに行かれるんですか」
私が溜め息混じりに言うと、陛下は少し考えてからポンと手を打った。
「ビールだ。今日はビールの気分だ!」

それに対してあからさまにロナルドが嫌そうな顔を浮かべる。
「Oh、ビアですかー? ミーはサケがいいと思いますけどねー」
「何だとロナルド? 今日みてえに汗かいた日は酒よりビールに決まってんだろうが!」
「Really? ジャパニーズ・サケのほうがgreat、greater、greatestですYO~」
「ほぉう・・・ロナルドくーん、それは俺にダメ出しをしているのかな~?」
「ダメ出しって何デスカー? ミーはビアよりサケが飲みたいと言っているだけでーす」
「そういうのがダメ出しっつーんだよ!!」
「I see、ではワタシは断固ダメ出ししまーす。ビアよりサケですよサケ」
「・・・てめえ、いい根性してやがるな。いいか、俺がビールっつったらビールなんだよ!」
「Oh~横暴です! 職権乱用デース!!」
「こういう時だけ難しい単語知ってんじゃねえ!! とにかくビールだ!!!」

そう言い放って陛下がビールの美味い飲み屋へとのしのし歩き始めたものだから、ロナルドは半眼で口先を尖らせた。
・・・やれやれ。この二人はいちいち喧嘩しなきゃ前に進めないのか。

ともかく。
そうして私たちはビールにありつくこととなった。

「おねーちゃん、生3つ!!」
陛下自ら威勢よく注文すると、すぐに人数分のジョッキが運ばれてきた。
泡がぎりぎりまで満ちていて、実にいい塩梅だ。

「よーっしゃ、今日もご苦労だった! 乾杯!!」
さっさと飲みたいのであろう、乾杯の音頭もそこそこに陛下は一気にビールをあおった。
「ぷはー! うめえ!!!」
伸びた無精ひげに泡をくっつけたまま陛下は満面の笑顔だ。
ぶちぶちと文句を言っていたロナルドも、何だかんだでぐいぐい飲んでいる。
「ホントに苦労でしたYo~。陛下が何も技を閃かないですもんねェー」
「何か言ったかロナルド君?」
「別にぃ~」
「第一、おめーだってなあ・・・」
2杯目のビールを注文しつつ陛下は負けじとロナルドに皮肉攻撃を始めた。
ロナルドもロナルドですでにジョッキは空だ。
あーだこーだと互いに思いつく限りの文句を言い合っている。

はあ・・・私も早く解散しておけばよかった。
ユリシーズたちが羨ましいよ・・・。

私は二人の小競り合いを聞き流しつつ、楽団の演奏に耳を傾けていた。

10曲目が終わった頃だろうか。
ふいに陛下がガタンと立ち上がった。
いったい何杯飲んだのか知らないが、陛下もロナルドも耳まで真っ赤になっている。
「よーーーっしゃあ、そろそろ2件目に行くか!」
ああ、やっぱりそのパターンなのですね。
陛下の飲みに付き合うと、必ず梯子するはめになるのだ。

「ビアもう一杯・・・ってあれー。次行くんですかー、エンペラー?」
ぐでんぐでんになって目が据わっているロナルドが顔を上げた。
この二人は弱いくせによく飲む。
ロナルドなど、あれほどビールに反対していたのではなかったか?
「おう! 次行くぞ次!!」
「イエース! ネクストですねー!!」
そしてへべれけ二人と私はその飲み屋を後にした。

外は店内の喧騒と違って風がひんやりと心地良い。
ただ・・・目の前だけが、暑苦しい。

『アーバロンアバロン~うるわしの~』

陛下とロナルドだ。
アバロンの国歌を歌いながら肩を組み、千鳥足で歩いている。
この光景にはもう慣れた。
だが私は何度目になるか分からない溜め息を禁じえない。

酔うと仲がいい――このことが発覚したのはいつだったか。
いつもは喧嘩ばかりしているくせに、ひとたび酔うとまるで長年の親友かのように様変わりするのだ。

「ほれ、ジェイコブ! おめーも歌えよ! カンバーランドの歌とかあるだろうが」
「まあそりゃ、ありますけど・・・」
酔いどれの真似はしたくありません。
と、心の中で言っておく。
「じゃあ歌えYoー。ダーグラスフォーファーネ~ラック城~」
人に歌えと言っておいてロナルドは勝手に歌っている。
何だその歌詞は。しかもメロディーはアバロンのそれと同じだ。

「・・・で、陛下? 2件目はどこに行くんですか? またビールですか?」
私が言うと、陛下はにやりと笑って振り返った。
「馬鹿野郎、決まってんだろうが。酒だよ! ジャパニーズ・サケだ!!」

そしてまた、二人は肩を組んで歌い始めた。

『アーバロンアバロン~うるわしの~』

本当に、仲がいいんだか悪いんだか。
まあおそらく答えは前者なんだろう、と確信に似た推測を持ちつつ、私は二人の背を追いかけた。

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