8,想いは不安へと(1)

– Porom Side –

「はぁ・・・」
 その夜、わたしは自分の部屋のベッドの上で何度目になるか分からない寝がえりをうった。
 ・・・眠れない。
 今日はいろんなことがありすぎた。
 カインさんを怒らせちゃったり。
 間違えてお酒を飲んで倒れちゃったり。
 カインさんに・・・抱き締められてしまったり。
 抱き締めるとはいっても、そっと肩を抱かれた程度だけど・・・。
「~~~!!!」
 カインさんのあたたかい体温を思い出してわたしは身悶えした。
 カインさんが自分の過去をわたしに話してくれたのはすごく嬉しかった。
 彼が行った悪事は簡単に許せるような内容じゃなかったけれど、それでも今のカインさんがそんな悪い人だとは絶対に思えない。
 いつも言葉は足りないけど、本当はすごく思いやりがある人だとわたしは知っている。
「だからってあんな言い方はなかったわよね・・・」
 自分が泣きながら怒って言った台詞がいまだに恥ずかしい。
 でもカインさんは「ありがとう」って言ってくれた。
 あのカインさんが「嬉しい」って言ってくれた。
 少しでも助けになれたんなら、それでいいのかもしれないけれど。
 それでも泣き喚くことはなかったんじゃないかと今は反省している。
 だけど同時に思い出されるのはやっぱりカインさんの体温で・・・。
 広い肩、あまり厚くない胸、大きな手、わたしの涙をすくう長い指、さらさらと揺れる長い金髪、穏やかに細められた青い瞳・・・。
「あああ、もう! どうしちゃったのよ、わたし!」
 今思えば、背中に手を回して抱きついてしまえばよかったと思う。
 そんな甲斐性のないわたしはそっと服を掴むだけで精一杯だった。
 でもきっとカインさんはそういうつもりでわたしを抱き寄せたんじゃないように思う。
 何故だか分からないけど、確信を持ってそう言える。
 そう考えると下心がないとは言い難い自分がものすごくダメな人間なような気がしてならない。
「はぁ・・・」
 わたしはごろんと身体を仰向けにして暗い天井を見つめた。
「わたし、本当に好きなんだわ・・・カインさんのこと・・・」
 もう、興味とか憧れとかじゃない。
 抱き寄せられた時によく分かった。
 もう一度、そうしてほしいと思う自分がいる。
 だけどそこに横たわるのは十歳という年の差。
 そして、彼のこころに根を張ったローザさんへの想い。
 わたしはこのままあの人を好きでいてもいいのだろうか。
 漠然とした不安がわたしを襲った。

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