21,ゲリュオン降臨(4)

– Porom Side –

「ほーっほっほっほ。素晴らしい、素晴らしい我が力だわ! 脆弱な人間め、ゼロムスを倒したなどと言ってもそんなものか!」
 ゲリュオンの顔の位置にバルバリシアの顔が現れた。
 そして腕をひと振りするとたちまち竜巻が巻き起こり、わたしたちは吹き飛ばされ岩壁に叩きつけられた。
 岩壁は破壊され、新たな瓦礫の山へと姿を変える。
 わたしは背中を激しく打ちつけられ、衝撃のあまり一瞬呼吸さえも止まるほどだった。
「ケ・・・アルガ・・・っ!!」
 遠のく意識を必死で引き止め、回復魔法を唱える。
 すでにエーテルは三つ服用した。
 その魔力もいつまでもつことか。
「ありがと、ポロム!」
 癒しの光に覆われたリディアさんはすぐにすっくと立ち上がった。
 あの細い身体のどこにそんな力が、と思うほどの我慢強さでリディアさんは倒れても倒れても立ち上がり魔法を唱え続ける。
 さすがだわ、わたしも見習わなきゃ・・・!
「フレア!」
 あっという間に詠唱を完成させ、リディアさんはゲリュオンに魔法を放った。
 爆発に次ぐ爆発がゲリュオンを襲い、バルバリシアの白い顔が歪む。
「ぎゃあああああ!」
 白と赤の閃光が入り乱れる爆発の中でゲリュオンはのたうった。
 やった、効いているんだわ!
 炎も収まった頃、ゲリュオンはがくりと地面に手をついた。
「やった・・・?」
 わたしは思わず呟いた。
 ところが次に聞こえたのは不気味な笑い声。
「ふ・・・ふふふ」
 そして信じがたいセリフだった。
「なぁんちゃって」
 バルバリシアの白い顔が持ち上がり、にやりと真っ赤な口を開けて笑ったのだ!
「くそ、テメーなめてんじゃねぇ!!」
 わたしたちをなめきった顔のゲリュオンにエッジさんが風魔手裏剣を放つ。
 一回、二回、三回。
 けれどそれらはすべて敵の振るう大剣によって弾き落とされてしまった。
「ほほほほほ・・・それで全力のつもり? クカカカカ・・・愚かすぎるぜ!!」
 ゲリュオンの顔がぐるぐると入れ替わる。
 バルバリシアからカイナッツォ、スカルミリョーネ、表情のないルビカンテ。
「最強ダ、我らこそガ最強ナのだァア!!」
 そしてついに声が無茶苦茶に混ざり合い、ゲリュオンは意味不明な咆哮を上げ始めた。
「・・・イカれてるぜ」
 エッジさんがちっと舌打ちする。
「ああ・・・だけど、倒さなきゃならないんだ、僕らが」
 ラグナロクを握り直したのはセシルさん。
 それを見たカインさんも、白く光るホーリーランスを構え直してぐっと低く姿勢を落とした。
「・・・そうだな。俺たちの・・・皆の未来のために」
 そして空高く舞い上がった。
 いつもに増して高いハイジャンプだった。
 お願い、命中して!!
 ところがわたしの祈りもむなしく、カインさんのジャンプ攻撃は敵の大盾によって阻まれてしまった。
「無駄だ、ムダダァーー!!!」
「クッ・・・!」
 ひらりと器用に回転して着地したカインさんだったけれど、その背中には焦りが見えた。
 それもそのはずで、攻撃という攻撃が敵の角や大盾によって阻まれ続けてきたからだ。
 どうにか隙を作らないとまともにダメージも与えられそうにない。
「今度はコチらノ番だ、覚悟シロ!!!」
 そしてゲリュオンが大きく息を吸い込んだ次の瞬間。
「死ねェ!!!」
 ひときわ強烈な火燕流がわたしたちを襲った。
 逃げる間もなく灼熱の波に飲まれ、わたしの意識は遠のいてゆく。
 ああ、もうダメなの?
 わたし、死ぬのかしら。
 みんなの未来を守るって決めたのに・・・カインさんと一緒に生きて帰るって決めたのに・・・!
 ごめんなさい・・・。
 深く沈んでゆく意識の中、セシルさんの叫び声が聞こえた――その声は助けを求めるように確かにこう言った――「兄さん」と。
 最後の瞬間わたしが目にしたものは、空に浮かぶもうひとつの月だった。

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