やちるが大人になりたいはなし(やち→剣)

剣八誕生日絵を描いていた時に浮かんだ剣やち話です。

 やちるが大人になりたいはなし

「……なんで、だめなの」
「なんでもクソもあるか。何度も言ったが明日の忘年会は酒蔵(さかぐら)でやんだよ、ガキが来る場所じゃねえ」
「えーっやだやだつまんないーっ! あたしも行くもん!!」
「文句があんならジジイに言え。とにかく、おめえは留守番だ。いいな」

「ちぇーっ。剣ちゃんのケチ」
 今朝の剣ちゃんとのやりとりを回想しながら、唇を尖らせたあたしは足元の小石をこつんと蹴飛ばした。
 つまんない、つまんない。
 明日は護廷十三隊の隊長や副隊長、席官たちが集まる楽しい忘年会なのに、あたしだけ仲間はずれ。なんでかっていうと、山本のじいじが今年の忘年会の場所を酒蔵に決めちゃったからだ。
 一番隊の隊舎の近くには尸魂界最大の酒造所があって、酒蔵には試飲所や宴会用の座敷も併設されている。そこを選んだってことは、今年の忘年会のメインはお酒だってことだ。そのうえ、じいじが主催だからすごい高級なお酒も出て来るんだって。お酒好きな人多いからみんなは嬉しいだろうな。
 でも、まだお酒を飲めないあたしはつまんない。飲むのがメインって最初から分かってるから、来ちゃだめだって剣ちゃんにも言われちゃった。
 きっと剣ちゃんたちはおいしいごはん食べたりお酒飲んだりしながらみんなで楽しくわいわい盛り上がるんだろうな。それを羨ましそうに思い浮かべながらひとりぼっちで留守番するあたし……想像するだけで寂しすぎる。
「あーあ。あたしもおとなだったらいいのにな」
 はぁ、とまたひとつ溜め息が空に浮かんで消えた。
 と、その時。あたしは通り過ぎかけた建物の前でふと足を止めた。そのまま一歩、二歩と後ろ歩きで戻る。
「十二番隊舎……そうだ!!」
 にんまり。頭に電球がひらめいたあたしは、考えるよりも先に地面を蹴った。
「あ、あれ、十一番隊の草鹿副隊ちょ……」
「こんにちはー!」
 目を丸くした門番たちの間を持ち前のすばしっこさで駆け抜けて、あたしは風のように十二番隊舎内に駆け込んだ。
 そう、おとなじゃないんだったら、おとなになればいい。
 おとなになれないんだったら、なる方法を探せばいい!
「マユリーン!!」
 ぴしゃーん、と軽快な音をたててふすまを跳ねのけ、目当ての人物を見つけたあたしはダッシュの勢いのまま机の上に飛び乗った。
「……何の用だ、私はアポもなしに突撃してくるガキは嫌いだヨ」
 そう言って舌打ちしたのは十二番隊隊長にして技術開発局局長のマユリン。今日もやっぱりおもしろい顔だ。
「ねーねーマユリン! あのねあのね、」
 あたしははやる気持ちを抑え、マユリンの耳元にそっと小声で言った。
「おとなになれる薬って、ある?」
 すこしの間があったあと、マユリンはおもしろい顔を大げさに歪めた。
「……ハァ? 私はガキの遊びに付き合っていられるほどヒマじゃな……」
「一日だけでいいのっ!! ねえ、おとなになれる薬、ないかなあ……?」
「…………」
 退けないあたしは、必死に手を握りしめてうったえた。
 明日だけでもおとなになれたら、あたしも忘年会に行ける。剣ちゃんと一緒に行けるんだ。マユリンは面倒そうにしてるけど、あたしはあきらめない。
 でも、しばらくにらめっこが続いたけれど、マユリンはハエでも追い払うかのようにシッシッと手を振っただけだった。
「粘ってもムダだ、さっさと帰りたまえ」
「うー……」
 名案だと思ったのに。
 マユリンも、「ない」とは言わなかったから、きっとおとなになれる薬はあるんだろう。けれど残念ながら、あたしにはおねがいする以外にそれを分けてもらうすべなんてない。
 あたしはしょんぼりと肩を落として机から下りた。何か別の方法を探そう。
「マユリン、お仕事のじゃましてごめんね」
 とぼとぼ。そんな擬音語がぴったりな足取りであたしは部屋の出口へと向かった。
「……待て」
「?」
 ふいに背後から呼ばれて振り返ると、マユリンは淡々と万年筆を走らせながらこっちにはひとつも目を向けずに言った。
「今日の私は機嫌がいい、土産のひとつでもくれてやる。そこの引き出しの上から二番目、左から三番目を開けてみろ。ガキにはお似合いのアメ玉が入っている」
「アメくれるの!?」
 マユリンの言葉を聞いたあたしはぱっと顔を上げ、もう薬をもらえなかったことなんか半分忘れてしまった気分で引き出しに飛びついた。背伸びをして言われた通りの場所を開けてみると、確かに黄色い紙に包まれたアメらしき丸いものがいくつか入っている。
「ただし一個だけだ」
「えー、三個くらい欲しいよう」
「ダメだ、そいつはただのアメじゃないからネ」
「えっ?」
 あたしはとりあえず一個だけ握り、引き出しを閉めてマユリンに向き直った。
「以前、霊圧の成長期を長引かせて能力の上限を引き上げる薬の研究をしていてネ。だができたものは、姿かたちだけが多少歳を取るだけで霊圧は変化しないし、おまけにその効果も半日しかもたないというとんだ失敗作だった。私はそのような駄作を薬とは呼びたくはないのだヨ。まあそんなアメ玉でよければ、一個くらいならくれてやるヨ」
 つまらなそうにそう言ったマユリン。あれ、でも、それって……。
「…………!」
 半日しかもたないけれど、おとなになれる薬。あたしは目を見開いて、手に握っていた黄色い包みのアメを見つめた。
「ホラ、これで話は終わりだヨ! さっさと帰りたまえ、私は仕事の邪魔をするガキが大嫌いだ」
「マユリン……ありがと!!」
「フン、二度と来るんじゃないヨ!」
 これで、これであたしも剣ちゃんと忘年会に行けるんだ……!
 あたしは黄色い包みを大事に胸に抱き、マユリンに感謝しながら跳ねるようなステップで十二番隊舎をあとにした。

「ったく……どうなってやがる」
 猪口(ちょこ)を長机に置き、俺はこめかみを押さえた。忘年会のメインイベントだったはずの、ジジイの『秘蔵の酒』の味も分かりゃしねえ。
「どうしたんスか、隊長? まだ酔うには早ぇーんじゃねえですか?」
「うるせえ、酔ってねえよ」
 酔っぱらいはどっちだ。足元も滑舌も大分おぼつかなくなっている一角の紅潮した額をべしっとはたいて俺はげんなりと溜め息をついた。
 斜め向こうには松本乱菊を中心とするかしましい女連中……と、やちる。
 おいやちる、何でおめえが今ここにいる。
 いやそれよりも、だ。何でおめえ、いきなりそんなデカくなってんだ。
 朽木ルキアよりも背が高くなったやちるを確認したのは忘年会に行く前、隊舎から自宅に戻った時のこと。朝は……いつものチビのままだったはずだ。俺の腹の上で飛び跳ねて起こしに来やがったから、間違いねえ。
 それがこんな急に大人になりやがったんだ、どうせ大方、涅あたりが一枚噛んでいるに違いねぇ。今日はジジイの手前あまり乱暴な振る舞いはできねえが、明日あたりちょっくら涅に文句言ってやる必要があるな。ついでに十二番隊舎の塀のひとつやふたつ、壊してきてやろうか。
 だが当のやちるはこの上ないくらいに上機嫌で、忘年会に来れたことが心底嬉しくてたまらないといった様子だ。俺が予想していたよりもずっとずっと、あいつは背伸びしたかったんだろうな。
「……ちょっと前まではもう少し聞き分け良かったのにな」
 どうも最近、やちるが譲らないことが増えてきたような気がする。やちるの自我の成長として喜ぶべきことなんだろうが、イカサマをしてまで大人ぶろうとするのはさすがに度が過ぎている。
 辺りを伺うと、座敷は俺の機嫌とは裏腹に飲めや歌えやの大盛況で、上座ではジジイと京楽ののど自慢大会が始まっていた。
 やちるもここぞとばかりに酒に手を出していたが、松本や卯ノ花がペースを調整してくれているらしくそう無茶な飲み方はしていないのが幸いか。
 反対側の長机に目をやると、若い野郎連中、特に三六九のいつもの三人組が早くもベロンベロンに出来上がっている。朽木ルキアに一度も酌をしてもらっていないと不貞腐れている阿散井はまあいい、問題は檜佐木と吉良だ。
 てめえら……さっきからチラッチラチラッチラやちるに色目向けてんだろ。俺に見えてねえとでも思ったのか、ああ?
「な、なあ、草鹿副隊長って大人になったらあんな美人になんのかよ!?」
「美人っていうか、すんごい可愛いよね……!」
 おい、聞こえてんぞ。
 ……まあ、厄介なことに奴らの言っていることは的を得ている。人間で言うところの十六、七歳の姿になったやちるは、つまり、その、なんだ……、美人だ。言葉にすると腹の中がムズムズするが。
 白い華奢な手足、肩下あたりまで伸びた桜色のしなやかな髪、幼さを残した大きな瞳と少しだけ大人びた口元、そして持ち前のくるくるとよく動く明るい表情。親馬鹿かもしれねェが、尸魂界にもなかなかいねぇ器量よしだと思う。松本たちも会が始まってからずっとやちるを可愛い可愛いと囲って放さない。おかげで檜佐木たち野郎連中は遠巻きに見ているしかないわけだ、ざまーみろ。
「それにしても隊長も将来大変っすねぇ」
「何がだ、一角」
「いや、副隊長がこうもべっぴんさんになるんだったら野郎どもが放っておかないじゃないですか」
「……それのどこに俺が関係あるんだ、あァ? やちるの好きにさせりゃいいだろうが」
「あ。それもそうっすよね、スンマセン」
 ケラケラと赤い顔で笑いながら一角は自分の禿頭をぺちっと叩いておどけた。
「いや、なんか隊長と副隊長はいつも一緒っていうイメージだから、この先別々になる想像なんてつかねえんっすよね。もしかしたら一生ずっと一緒なんじゃないかって思うんスよ」
 半ば机に突っ伏し気味で話しているところを見ると、どうやら一角の意識はもうだいぶ頭の上に浮かんでしまっているようだ。いびきを立て始めるのも時間の問題だろう。
「……将来のことなんか分かんねェだろ」
 勝手なことを言う部下にぼそりと返したが、はたして酔っぱらいの耳には届いたかどうか。
 すると絶妙なタイミングで弓親が割って入ってきた。
「すみませんね、隊長。コイツちょっと飲み過ぎたみたいで」
「おう。廊下にでも転がしとけ」
「一角、一角ってば。ほら、ちょっと外出て頭冷やすよ!」
「あー? 弓親、俺ぁ別に酔ってなんか……」
「そんなぐでんぐでんで言われても説得力ないから! ほら行くよ!」
 立ち上がるのも怪しい一角の脇の下に後ろから腕を差し入れ、引き摺るようにして弓親は一角を引っ張り上げた。一見ナヨっちく見えてもこういう筋力がきちんとついているのが十一番隊の十一番隊たる所以だ。
「あ、隊長」
「なんだ」
 一角を肩に担ぎ直した弓親は、少し声のトーンを落とした。
「副隊長が薬まで使って大人になりたかった意味、ちゃんと考えてあげてくださいね」
「…………?」
 それは、限りなく笑顔に近い苦笑いだった。だがそれも一瞬のことで、すぐに鬱陶しいウインクをバチーンと投げつけて弓親は一角を担いで廊下へと消えて行った。
「……忘年会のためじゃねぇのかよ」
 弓親の意味深な台詞を胸中で反芻しながら、俺はもはや全然味の分からねぇ酒を一気にあおった。
 熱燗だったはずのそれは、もうとっくに冷めていた。

「えっへへへへ、今日は楽しかったぁー」
 帰るなり、ばふっと布団に飛び込んでやちるはふにゃふにゃと笑い声を上げた。いつもなら丈が余る布団も、今日だけはその長さがしっかりと役割を果たしている。
「はしゃぎすぎだ」
「だって楽しかったんだもん」
 まあ、それは見てりゃ分かる。さっきも帰り道がまた一苦労だったんだ。デカくなったくせにいつもみてぇに肩に乗っかろうとしやがって。肩が駄目だと分かると今度は腕に絡みついてきて見せ物もいいとこだ。誰だ、羨ましいとかほざいてたヤツは。暗くて顔が見えなかったおかげで命拾いしたと思えよ。
 とにかく、いつもとは勝手の違うやちるに振り回されて俺は珍しく疲労困憊だ。
「やちる」
「なにー?」
「もうこんな真似すんじゃねェぞ」
「!」
 こんな真似、というのが何を指しているのかは言わずとも伝わったんだろう、俺が言うと、やちるはあからさまに表情を固くさせた。なりは大人だが、まるで叱られたガキみてぇに。
 目に見えてしゅんとしたやちるは布団の上に正座してぽつりと言った。
「……ごめん、なさい」
「…………」
 そのしおらしく観念した様子に、俺もそれ以上の言葉は引っ込めた。やちるは我儘は言うし無茶苦茶もするが、俺が本気で駄目だと言って分からない馬鹿じゃあない。
「……で、いつ元に戻るんだ?」
「んっと、たぶん明日の朝かな……」
「そうか。じゃあ風呂入ってさっさと寝ろ」
「はぁい……」
 やちるの答えを聞いて内心ほっとした俺は畳から立ち上がった。もしこれが一週間や一ヶ月このままだと言われたらまた対処を考えないといけないところだった。
 が、やちるの部屋を出ようとした俺の服の裾が反対方向に引っ張られ、俺はふすまに掛けかけた手を止めた。
「ねえ、剣ちゃん」
 振り返って見下ろすと、やちるがやけに神妙なツラで俺の羽織の裾を遠慮がちに摘んでいた。
「……何だ」
 するとやちるは少し迷ったように視線をさまよわせてから、揺らいだ声で問うてきた。
「剣ちゃん……剣ちゃんは、あたしが大人だったら、困る?」
「…………!」
「だって剣ちゃん、今日ずっと不機嫌だった……」
 神妙に見えたのは、不安からか。やちるが大人になって周りは皆もてはやしているのに、俺だけがつまらなそうにしていたからか。やちるは元々観察力のあるガキだ、宴会の間もおそらく松本たちと騒ぎながらも俺の動向をチェックしていたに違いない。
 俺はやちるに向き直り、あらためてその姿を見下ろした。
 南天模様の着物の裾から惜しげもなく覗く手足はあのちんちくりんのガキから想像もつかねぇほどにすらりと繊細な曲線を描いていて、上目遣いで見つめてくる瞳は酒のせいもあるのか少し潤んでいて見る者を惹きつけてやまない。そして一番問題なのはやちる本人がその無防備な罪深さを分かってねぇことだ。
 やちるが一人で眠れるようになってからは別々の部屋で寝るようになっていたが(それまでは同じ布団じゃねぇと寝てくれなかった)、今日ばかりは別々の寝室で良かったと心底思わざるをえない。
 やれやれ、と俺は肩で息を落とし、さっきのやちるの質問に答えた。
「……あぁ、困るな」
「え……」
 俺は片膝を畳について、泣きそうなやちると目線の高さを合わせた。
「勘違いすんな、焦ってデカくなることねェって意味だ。おめえはゆっくり大人になりゃいいんだよ」
 ちっこいやちるによくやるように、頭をぽんぽんと撫でてやった。いつもこうすりゃ、どんなに機嫌が悪い時でもそれなりに持ち直してくれる。身体がデカくなってもそれは変わってねぇらしく、やちるは感情の昂りを静かに収めた。
「大体よ、何をそんな急ぐことがある?」
「だって……」
 やちるは口をへの字にして、視線を膝の上に落とした。
「あたし、大人になるのにまだ何年もかかるでしょ? そしたら……」
「そしたら、何だ?」
 やちるの表情が一段と険しくなった。
「そしたら……剣ちゃん、あたしが大きくなる前にお嫁さんもらっちゃうかもしれないじゃん!!」
 …………。
 あ? 今なんつった? オヨメサン、だと……?
「……おいちょっと待てやちる。おめえ何の話してやがんだ」
「だからぁ! 剣ちゃんが結婚しちゃうかもって話!」
 話の飛びように俺は頭を抱えた。
 もちろん俺は嫁がどうだの結婚がどうだの、やちるに言ったことは一度もない。それに日中は仕事と鍛錬に明け暮れ、晩飯は家でやちると食うと決めているこの生活で女と付き合う暇などあるわけがない。職場も家も一緒なんだからやちるもそれくらい知ってんだろうに。
「……あのなあ、やちる。もし俺が結婚したら、おめえのことはどうすんだ? 嫁が来るからおめえは副隊長用の屋敷で一人で暮らせって放り出すのか?」
「ええっ、やだー……」
「喩え話だバカ。で、おめぇは俺がそういうことすると思ってんのか」
 問うと、やちるは即答で頭を横にふるふると振った。……おいおい、言ってること矛盾してんぞ。あれか、信頼はしてるが信用はしてねぇってのか。
 まあ中身はガキのままなんだ、漠然とした不安とか、うまく整理のついてねぇ部分もあんだろうな。
「……ったく、余計な心配してんじゃねえよ」
 わしゃわしゃと、いつもよりも長い髪の毛をかき混ぜてやると、ようやくやちるに笑顔が戻った。はにかみながら、頭が鳥の巣になることを甘んじて受け入れている。
「えへへー。じゃあ剣ちゃん、あたしが大きくなるまでちゃんと待っててくれる?」
「そう言ってんだろ」
「わーい! ありがとう剣ちゃん、嬉しい!!」
 破顔して喜ぶやちるを見て、ようやく今日の疲れが少し肩から下りた気がした。
 ……のも、束の間。俺は、やちるの本気をなめていたのかもしれねぇ。

「あたし、頑張っていいお嫁さんになるからね!!!」

 ……あ?
 ちょっと待て。
 オヨメサンって、誰の。
 俺か。俺なのか。
「お、おいやちる……?」
「剣ちゃん知ってるー? 人間界には結婚式で『うえでぃんぐけーき』っていうのがあるんだって! あたしねえ、こーーんなおっきなのがいいな! いちごがいっぱい載ったやつ!」
 ゴールしかけた話の筋が、どういうわけだか振り出しに戻っていた。 

『いや、なんか隊長と副隊長はいつも一緒っていうイメージだから、この先別々になる想像なんてつかねえんっすよね。もしかしたら一生ずっと一緒なんじゃないかって思うんスよ』
『副隊長が薬まで使って大人になりたかった意味、ちゃんと考えてあげてくださいね』
 一角と弓親に言われた台詞が今になって俺の側頭部をぶっ叩くような勢いで効いてきて、俺は思わず天を仰いだ。

 翌日、「剣ちゃんと結婚するー!」と触れ回ったやちるの話に尾ひれ背びれが付き、「更木隊長は大人になった草鹿副隊長の可愛さに惚れ込んで、将来誰にも渡さないために今のうちからプロポーズをしたらしい」という噂がまことしやかに囁かれるというさらなる一騒動に発展したのだが、それはまた別の話……。

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