【BL注意】高→緑っぽいSS

※ぬるいですが腐向けなので閲覧にご注意ください

マジバで高尾と黄瀬が喋ってる話。
ついったの診断「私は7RTされたら、ヤミーの緑高の『さっさと告白すればいいんじゃね?』で始まるBL小説を書きます!d(`・ω・)b http://shindanmaker.com/321047」をもとに書いたSSです。
付き合うまでは緑高でも高緑でもこだわっていないので、高→緑な感じになっています。
なんか今までずっとROM専だったのでものすごい恥ずかしい…ウオオ///


「さっさと告白すればいいんじゃないッスか?」

 補習帰りの土曜日の午後、黄色い頭をしたイケメンモデルは俺の正面でさらりとそう言った。
 まるで、このテーブルの上のホットコーヒーのお代わりでも頼むかのような調子で。

     *     *     *

 高校三年の冬。ウィンターカップからセンター試験までの日数は一ヶ月もない。日頃の学力が抜きん出ているわけでもなく、大学以降まで通じるような運動能力に恵まれているわけでもない俺は、当然地道に受験勉強に励むことになる。ウィンターカップの余韻に浸る間もろくにないまま、俺は我ながら真面目に土曜の補習にも出席していた。
 真ちゃんは志望大学の二次試験対策専門の講座を受講するためほぼ毎日塾通いだ。まあ、塾と言っても俺が知ってるような地元塾じゃなくて、一定の偏差値以上じゃないと入れないような雲の上のやつなんだけど。
 そんなわけで、ひとりでマジバに寄るのも何なので今日は海常の黄瀬涼太くんと昼飯の約束をしてたってわけだ。
「あーあ、誰か記憶パン発明してくんねーかなー。百年戦争だのバラ戦争だの……俺の脳味噌が大戦争だっつうの」
「お疲れみたいッスねえ、高尾くん」
「俺は真ちゃんみたいに頭良くねーしさ、このちっぽけなマイ味噌にすがるしかねぇわけよ……」
 ハハハ。自分で言っててちょっと泣けてくる。一年の頃もっと勉強しときゃ良かった、とつい思わずにはいられないけど後の祭りだ。
「涼くんも忙しいんっしょ? 四月からはモデルに専念するって言ってたよね」
「そうッスね、契約先が増えるから今朝も挨拶に行ってきたとこ。お互い一段落したら買い物にでも行かない?」
「お、いいねー。ちょうど私服が足りなくなるなーって思ってたんだ。まぁ無事大学に受かればの話だけどな、へへっ」
 涼くんとはバスケの会場でちょくちょく顔を合わせていて、何度か話しているうちに仲良くなってしまった。ウマが合うと言うか、気兼ねなく話せると言うか、ゆるくてほっとできる友好関係がずっと続いている。それは涼くんも同じなようで、「~っち」と特別視して呼んだりせずに、「高尾くん」という対等ないち友人として付き合ってくれている。
 敵同士だった現役時代の頃から時々こうして会っては互いの近況を話したり、愚痴を聞き合ったりしていて、その回数は軽く両手を超えると思う。今日会おうと思ったのも、きっと俺の中でもやもやしているストレスやら何やらを吐き出したかったからかもしれない。
「そういえば、緑間っちはどこの大学志望なんッスか?」
「もち、旧帝大。本命がT大薬学部だってさ」
「マジ!? 緑間っち、そんな頭イイんッスね……」
「そ。俺もそれ知ったのついこの前でさ、さすがに凹んだわ」
 バスケをしていれば、真ちゃんは俺のパスが届くところにいてくれる。教室では、後ろを向けばしかめっ面を律儀に上げてくれる。だけど、真ちゃんが立っているところ、見ているところは、俺のそれとは全然ちがうのだと思い知らされた。
「あーあ、何だかなあ。先月まではみんなでおんなじもん目指してたっていうのに、今はバラバラのとこに行くために努力してんだよなぁ。別にそれが悪いってワケじゃねーけどさあ。なんか、こう……」
「せつない?」
「あー……うん、そう。せつない。せつないな」
 頑張れば頑張るほど真ちゃんと俺は遠のいていく。こんなこと初めてだから、すごく変な感じがする。涼くんの言うとおり、せつなくて、……寂しい。
「高尾くんは今までずっと緑間っちと一緒だったもんね」
「まあねー」
「ヘタなカップルよりよっぽど一心同体だったんじゃないッスか? 盆も正月も、クリスマスもバレンタインデーも誕生日も高尾くんと緑間っちのノロケ話聞かされた気がするんッスけど」
「あれ、そうだっけ? ……そうかも」
 涼くんと俺は、ひひひ、と笑い合った。すでに過去のものになってしまった思い出が今でも鮮やかに蘇る。
 盆の夏祭りでは、真ちゃんがどうしても水風船をうまく釣れなくて、その後水風船練習機なるものを自分で作って練習してたんだから驚きだ。自力で風船をふくらませて水槽に落とす緑間の真顔は今思い出しても腹筋がよじれそうになる。
 正月は零時きっかりに近所の神社に一緒にお参りに行った。はじめは寒いから嫌だとゴネていたのに、おしるこの無料配布があると言うと三分で支度をして家を出てきたんだったっけな。
 クリスマスはウィンターカップだから当然一緒にいた。リア充たちで溢れかえる街中を俺たちウィンターカップ帰りの面々はオレンジ色の秀徳ジャージで闊歩し、冬の寒さも感じないほどに胸ん中と瞼が熱かった。
 バレンタインデーは俺も真ちゃんもそれなりの数を女の子たちから頂けたわけだが、どういうわけか、ならば自分たちでもチョコ菓子を作ってみようという話になって、深夜まで俺んちでクッキーやらケーキやら食べきれないほどにあれこれ作って遊んだ。真ちゃんは日頃の器用さが信じられないくらいにへたくそだったけど、一緒に作ったやつは他のどんな高級チョコよりも美味しかった。
 誕生日は……なんか思い出したらこっ恥ずかしくなるから心のうちにしまっておく。
 ……楽しかったな。
 家族よりも誰よりも、こんなに一緒にいたのにな。
 こうしてあっさり離れていってしまうんだな。
「はぁ」
 無意識のうちに今日何度目かの溜め息をついて、俺はマジバの天井を仰いだ。
 そんな俺をしばらく眺めていた涼くんは、食後のコーヒーを口に運ぶ手を止めて、やがて言った。
「高尾くんさぁ」
「んー?」

「……さっさと告白すればいいんじゃないッスか?」

 カシャーン。
 豆鉄砲をくらった鳩ならぬ、斜め上からの不意打ちを受けた高尾和成、思考停止。
 金属がぶつかったような澄んだ音は、自分が弄んでいたコーヒースプーンが床に落ちた音だと、たっぷり数秒遅れて気がついた。
「……えーっと? 涼くん?? 言ってる意味が、ワカンネーんですけど……っ痛ぇ!」
 どぎまぎしながらとりあえずスプーンを拾おうと身をかがめると、後頭部を思い切りテーブルで強打した。
 落ち着け、落ち着け俺。ひっひっふー、ひっひっふー、違う、こりゃ出産の時のラマーズ法だ。深呼吸だ高尾和成、すーはー、すーはー。
「こっ、告白……ってなななな何をだよ」
「だってさ、好きなんでしょ? 緑間っちのこと」
「……誰が?」
「高尾くんが」
「……俺が?」
「そうッス」
 マジバのガラス窓から見える外は木枯らしが吹いていて、道行く人は皆コートを着込んで口元までマフラーを巻いている。なのに、そんな寒い真冬の中、俺はひとりだらだらと汗だくになっていた。
「そ、そ、そ……んなワケ、ねーだろ!!」
 自分でもびっくりするくらいのでかい声が出てしまい、俺は慌てて口を塞ぐ。
「……だってさ、俺、男だし。べつに、そーゆー趣味ねぇし」
 ぶちぶち言う声が段々小さくなってゆく。
「そりゃ、真ちゃんのことは、す、好きだけど、……そーゆーんじゃ、ねぇもん……」
 俺は、テーブルに突っ伏して蚊の鳴くような声で絞り出した。そーゆーんじゃねぇんだ、と繰り返す。まるで、その言葉を口に出すことで、そうあらねばならないと自分を縛るように。
「……ゴメン、俺、余計なこと言っちゃったッスね」
 申し訳なさそうに涼くんが謝ってきたけど、別に涼くんは悪くない。俺は伏したままふるふると首を振り、力ない笑顔を上げた。
「まあ、それに、仮にもしそーゆーことがあったとしても、告白なんかできねぇよ」
「なんで? 男だから?」
「……だって、俺の都合で真ちゃんの輝かしい未来を奪うわけにはいかないじゃん?」
 真ちゃんと離れる寂しさとは矛盾しているけれど、俺の未来予想図の中には未来の真ちゃん像がしっかりと立っている。
「真ちゃんはこれから一流の大学に行って、大学院も出て、かわいい嫁さんもらって、アカデミックか有名企業か何かですごい研究して、論文出したり学会で発表したりなんかしてさ、日本の医学の最先端を担う男になるわけよ。俺は真ちゃんがそうなるのがすげー楽しみでさ。邪魔なんかしたくないんだよねえ」
 俺は真ちゃんの人生の汚点になるようなことはしたくない、それだけは誓って言える。
 同じ大学に行こう、なんて言えない。まして告白なんて。
「ま、そーゆーワケだから、さ」
「……そっか」
「俺って健気っしょ?」
「うん、めちゃくちゃ健気ッス」
 涼くんがなんだか泣きそうな顔で笑う。俺も笑ったけど、おんなじような顔してんのかな。
 砂糖を入れたはずのコーヒーも、しょっぱい味がした。

 その後涼くんは夕方の仕事のため帰っていった。
 俺は少し自習をして帰ろうと思ってまだマジバに居座っている。もう少ししたら客が増えてきて退散しないといけないだろうから、それまで数ページでも進めよう。
 けれど、数学の問題を解きながら、サイン・コサイン・タンジェントの合間に蘇ってくるのは涼くんの言葉だ。

『さっさと告白すればいいんじゃないッスか?』

「……簡単に言ってくれるよなぁ、ちくしょー」
 俺はノートに解答を書く代わりに、また長い長い溜め息を落としてひとり突っ伏したのだった。


後日談っぽいの→『同棲記念日』※付き合ってない

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